「あー、あっつい」
視線を、話題をそらしたくて、どーでもいいようなことを呟いてみる。
まだ、鼓動は、速い。
「言うなよ、暑いんだから」
あついあついあつい。
きっとこれも、榎本のせい。
「榎本ってここくる前どこいたの?
…なんか帰国子女説とか入院説とか色々あるみたいだけど。
今んとこ帰国子女が有力かな」
言って、気付く。
あたし、榎本のこと、なーんにも、知らない。
それは、今まであたしが必要以上のものを求めなかったからなんだけど。
「篠原は?どう思ってんの?」
まさか。
どっちも信じてないに決まってる。
しかも、まだ入院説のが信憑性がある。
小さく首を振ると、曖昧な笑いが返ってきた。


