「篠原、ここ教えて」
「あぁ、ここはね…」
榎本に尋ねられたのは古典。
暗記とかも多くて、あたしも得意じゃないけど、慣れさえすれば簡単だと思う。
丁寧に解説つきで教えてやれば、
お前って国語だけは得意だよな…
なんて余計なこといいやがって、一発殴ってやろうかと思ったけど、その後言われたありがとう、にそんな手が膝に帰ったのは、また別のお話。
不意打ちなんて、ズルい。
一瞬高鳴った鼓動は、きっと榎本のせい。
それがわかってるからなお悔しい。
「…榎本の、ひきょーもの」
誤魔化しも兼ねて呟けば、意味がわからないと言うように、向けられる、視線。
本当に、榎本って、ズルい。


