情報が伝わるのは、とても早い。
そして、太田が言ったように、
誰もが陽一郎を青木の親友だと理解しているようだった。

田中は遅刻寸前に教室に駆け込んできて、真直ぐに陽一郎の席にきた。
「小原！昨日、秦野から電話きたか？」
「うん」
「びっくりしたな～、太田休んでるみたいだぜ、女子が言ってた」
「そう」
「どうせ俺たち水泳部は、午後から早退してもいいんだって、
明日は五組と水泳部全員で葬式に出席だそうだ。おい、聞いてるか？」
「うん、聞いてる」

　クラスの連中は、遠まきにしながら耳だけは、２人の会話を聞いている。 　
お通夜は、黒い行列に並んでお焼香をした。
学生服を来た遺影を見ただけで、混雑な中、
黒い服ずくめで、
挨拶に出ていた青木のお父さんだけを見つけることができたが、
機械的にお辞儀をする中で、
陽一郎を認めたとも思えない。

人々の断片的な話し声が聞こえる。
　「内申書には、二年の成績と一学期の成績は行くでしょ……だから、
試験を受けなきゃ、駄目なのよ」
「どうして、こんなになるまで放っていたんだって先生がいったそうよ」
「急性だもの仕方ないわよね」
「そうとう進んでいたらしくて、
本人痛かっただろうって」

「我慢してたのかしら」
「でも、変わりなかったって……」
「ちょっと食欲がなくなったくらいだったそうよ」
「水泳部だったんでしょ？」
「健康そうだったのにね」
「若いのにね」

端々に聞こえる噂話しのようなヒソヒソ声に、陽一郎は、苛立ちを感じた。
　翌日十二時からのお葬式は、
五組全員と水泳部と希望者が参列した。

その中で最後のお別れだと棺桶の前まで、
太田、田中、と共に陽一郎も呼ばれ、
菊の花を１本ずつ中に入れるようにと秦野が言った。