蜜林檎 *Ⅱ*

振り返ることなく愛する人
の元へ。
 
深く、傷ついている樹の元へ。

『ソウちゃんを
 傷つけてしまった
   
 でも、後悔はしない
 どんなに憎まれても』

雅也の怒鳴り声が
聞こえたような気がした。

「おまえって奴は
 せっかくアンが
 イッキの事を忘れて
 ソウと一緒になることを
 決めたというのに

 なんてことを」

お腹の大きい百合の肩を
優しく抱く真。

「ソウちゃんには悪い事を
 したと思ってる
 だけど、アンが心から
 愛しているのはイッキ
 ただ一人だけ、彼だけなの」

雅也は何も言えずに
肩を落とした。

「ありがとう
 ユリちゃん・・」