蜜林檎 *Ⅱ*

このまま、もう二度と
逢えないかのように・・・

杏は、樹の頬に手を翳し
樹だけを見つめて言う。

「イツキ、心配しないで
 私は、すぐに
 ここに戻ってくるから・・」

樹は、杏に最後のキスをした。

これで最後・・・

杏の居ない部屋に一人きりの
樹は、『青月』のマッチを
手に持ち、書かれてある番号
に電話をかける。

「もしもし・・・」
 
その声は、雅也だった。

「・・・杏の事を
 宜しくお願いします」 

「ありがとう・・・
 イッキ・・・すまない」

電話越しに頭を下がる雅也の姿
が樹には見えたような気がした