「だから、俺は
 誰も責めたりしない
 
 俺はイツキさん
 貴方の息子じゃない
 
 二人の父親は
 俺には要らない」

はっきりとそう告げる烈の姿は
とても凛々しかった。
 
樹は、ほんの少しだけ
寂しい気持ちになる。
 
烈は帰り際、振り返り
樹に告げた。

「貴方はずっとこれからも
 俺の憧れの人です
 
 だから早く怪我を治して
 歌ってください」

樹は、目の前が涙でぼやけて
百合と共に病室を出て行く
烈の後ろ姿を見れない。

「ありがとう」

病院に戻った杏は、百合から
話を聞き、慌てて荷物を
その場に置き、病室のドアを
開け、樹に駆け寄った。

そして、彼を

そっと抱きしめた。