杏に一生懸命に
言って聞かせる百合。
   
そんな二人が立つ歩道の横
道路に、一台の車が停まる。

その車から、降りた樹は
杏の涙を見て彼女に駆け寄る。
   
みんなが樹の行動に注目する中
彼は、杏の肩に手を触れた。

「どうした杏、何があった
 
 どうして泣いてるの?」

心配な面持ちで、杏を覗き込む
樹に杏は、決して言っては
いけない言葉を言ってしまう。

「イツキ、貴方はいったい
 誰を愛しているの?
 ・・・・・・
 私、もう
 あなたを信じる事に疲れた」

「杏・・・」 

ステージの上の樹に、何度手を
伸ばしても彼には届かない。
  
「こんなに苦しい胸の痛みに
 ずっと耐えていかなくちゃ
 いけないのなら
 ・・・・・・
 貴方なんかいらない」

『貴方はすごい人で、皆が
 貴方を愛してる
 
 それが、私の重荷になって
 しまった』

樹の瞳が、悲しみの色に染まる