「やめてください」

「少しでいいから
 いいじゃないか、ねぇ」
  
樹は、酔っ払いの肩に
手を置いた。

「その子、俺の連れなんで」

そう言って、まりあの
手を掴み、自分の後ろへと
彼女を隠した。

樹の背中に頬を寄せるまりあの
胸は遠い昔、樹に憧れていた時
のように、ドキドキと波打つ。
   
まりあは、まだこんなにも
樹を好きな自分が存在する事に
驚くのだった。

男は、樹の姿を見て何も
言わずに立ち去って行く。

それから、二人でピアスを
探したが見つからない。
   
それもそのはず、ピアスは
もうここには無い。
 
杏が持っているのだから。