蜜林檎 *Ⅱ*

まりあは、親から誕生日の
お祝いにもらった大切なピアス
を片方、落としてしまった事を
樹に告げた。

「もしかしたら、樹の車に
 あるかも知れない
 今度、探してもいいかなぁ
 とても、大切なピアスなの」

まりあの真剣な表情に樹は頷く

「今、そこの駐車場に停めて
 あるから、これから
 一緒に見に行こう」

「いいの、ありがとう」

二人は一定の距離をとりながら
他愛の無い会話を交わす。

「じゃあ、今日はタクシーで
 帰って、明日、モリちゃんが
 車を取りに来てくれる訳ね
 
 マネージャーさんも
 大変だね」

駐車場に着いた時、まりあに
絡む酔っ払いがいた。

「姉ちゃん、綺麗な人だねぇ
 これからどこか行こう」

酔っ払いは50代ぐらいの男性で
嫌がる、まりあの手を掴んで
離さない。