蜜林檎 *Ⅱ*

「お父さんまで行きたいとか
 言い出して大変だったんだよ
   
 そうだ、ルリに
 せっかくのライブに
 お邪魔して、ごめんねと
 お姉ちゃんが伝えてほしい
 って・・・」

「なんか、緊張する
 昔の彼女さんな訳でしょう?
 それで今の彼女」
 
二人は、顔を見合わせて
笑い合う。

杏は、瑠璃子と別れた後
そのまま真っ直ぐ帰宅した。
   
杏は、鞄の中に入れたままの
ピアスを取り出し使っていない
化粧道具のポーチに入れて
引き出しの奥深くに閉まった。
  
『イツキは、私を絶対に
 裏切ったりしない』

杏は、樹にメールを打つ。

その頃、樹は仲間の話に
耳を傾け、お酒を飲んでいた。
 
ふと、腕時計に目をやる樹。

「イッキ、時計ばっかり
 気にしてないで、もっと
 飲んだ飲んだ」

朔夜の声のすぐ後に
携帯電話の受信音が鳴る。