着替えを終えて戻った白河社長は眼鏡をとっていた。
ジーンズに黒のポロシャツというラフな格好にもかかわらず更に私の心拍数が上がった。
キッチンに目を向けながら「腹が減った」と呟くと私の横に座った。
「おまえが片山さんに選ばれた理由がわかるか?」
テレビのリモコンを持ちながら聞かれた。
「わかりません」
と答える。
「お前の家は有名な料亭だろう。うちも使うが片山さんは特に気に入っててお前の母親とも親しいから仕事ができて料理やお花やお茶もできるお前を選んできた。」
なるほどと納得した。確かに身の回りの世話をするならそういうことができないといけない。
1人物思いに耽っていたらテレビからニュースの音が流れてきた。
とりあえず食事の用意だ。
「社長は食べ物の好き嫌いがありますか?」
「ない」
