クローン

その次の日
つまり僕が死ぬ前の日
神様が言ったとおり僕は彼女と話をした

｢ねぇもしも
もしもの話 僕が明日死んだらどうする？｣

彼女はやっぱり驚いて目を丸くする
そうと思ったら俯いた

｢もしもの話でもそんなの嫌だよ…｣

彼女の声は震えてた
きっと涙をぐっと堪えてるんだろう
僕はポンポンと彼女の頭を撫でる

｢うん僕も君を置いてくなんて嫌だ
でもそうなるとしたら君はどうする…？｣

彼女はギュッと手を握りしめて顔をあげた

｢私は…忘れないようにする
忘れないようにいっぱいいっぱい写真を撮って
一緒にいた証を残す｣

｢僕のことを忘れないの…？
覚えてても辛いだけだよ…？｣

彼女はフルフルと首を降る

｢忘れない
…最初は辛いと思う哀しいと思う
でも忘れちゃう方が辛い
その時思った幸せな気持ち暖かい気持ち
忘れたくない
私はこの人といたんだ
幸せだったんだ
って胸を張って言えるようになりたい｣

あぁ…彼女は強い
僕が思ってる何倍も
彼女は強い
間違ってるのは彼女でも神様でもなく
僕なんだ


…僕の記憶を消して
なんてもう言わないよ
クローンだっていらない

彼女は強い