でもそれも叶わないなら…

「僕についての記憶を消してよ
あの娘からそれ以外の人全てから
誰も悲しまなくていいように
…あの娘が悲しまなくていいように」

神様は言う

「本当にいいの?忘れられることは辛いことだよ?
君が生きた証も君との思い出も全部なくなるんだから」

そんなことは知ってるんだ
でもたとえ誰にも覚えられていなくても

「僕が覚えてるからいいんです

僕が辛いだけならいいんです」

そうあの娘が悲しいなら僕も悲しい
あの娘が辛いなら僕も辛い
僕の中心はあの娘
…だから
あの娘が笑えるなら、いいんだ
今、僕の眼に涙が浮かんでいるとしても
あの娘が生きて笑えるならいいんだ

それが僕の幸せだから

いつまでもあの娘が笑っていてくれればいい

僕の記憶にあの娘がいるならいい

「君がそれでいいなら僕はいいよ?
でも君が死ぬのは明後日
君の大切な人と話し合って決めなよ
クローンのこと、記憶のこと」

そう言って神様は消えた