今日も一日が終わる。


絵の具の赤を薄めた様な空を見ながら私はため息をつく。

いけない。まただ。



気を付けていてもため息は出てしまう。何でだろう。


すこし自己嫌悪になってしまう自分すら嫌になる。



「私も思春期って事かな」


鞄に詰め込んだ教科書が重い。
毎日こんなもの持って歩くなんて拷問だ。

私は誰もいない教室を見渡し更にため息を吐いてしまう。



誰か持ってくれないかなぁ


居るはずのない便利屋さんを想像する


頭に浮かんだイメージはよくドラマで持ちきれない荷物を持たされたいじめられっ子だった


いけない。可哀想過ぎる



私は重い鞄を持って教室を出ようとした。




けどちょっとした好奇心から私の足はある机にと足を向ける。


その席は窓際の一番後ろから二番目


守中高志君の机だった。


私はその机の中を覗き込む。

「やっぱり、置き勉だ…」


いつも軽そうな鞄を持っているから変だとは思っていたけど




その時私はふと思った。


「何してるんだろ、私」




誰かに見られた訳でもないのに私は顔を歪めて机から離れた

でも、好奇心に負けてもう一度机の中を見る。



何か、違和感を感じて



「はこ…?」



違和感の正体は机の奥に隠す様に置いてある箱だった



私は罪悪感に悩まされながらも好奇心からその箱を机の中から取り出した。


「ごめん、守中君」


姿の見えない主に向かって謝罪し私は箱を開けた。


「…時計?だよね」


中にはシンプルな造りのデジタル表示式の腕時計が入っていた。

私は中からそれを摘まみ出すと本来なら時刻が無感情に刻まれるであろう部分を眺めてみる。


「…電池切れ?」


そこに写っているのは呆けた顔の自分の顔だった。