綾とは、大学時代に知り合った。
なんとなく偏差値の高い大学に通い、なんとなく卒業し、なんとなく教師になった者同士だ。
そして、揃って親に、

「あんなに、いい大学に行ったのに。
 どうせなら、医学部に行かせとけばよかった。」

と言われた者同士だったりもする。
あぁ、確かにそっちの方が良かったかも。
そんな風に思うこともたまにある。

綾の故郷は、俺の故郷の隣の県だった。
なのに、彼女は俺の故郷で、採用試験を受けると言い出した。

「いいじゃない。私、あなたと別れるつもりなんてないもの。」

綾は、強情でお嬢様気質なプライドの高い女だった。
医学部に行かず、こうして教師をやっている理由は、親が医者になることを進めてきたかららしい。

「なれと言われたものになるなんて、絶対に嫌よ。
 人に従うのは、好きじゃないもの。」

いつか、そんなことを言っていた。

「子供は、あんまり好きじゃないけど、高校は楽しいわ。
 あれくらいの年齢がちょうどいいわね。中二病も少ないし。」

こんなことを言っていたときもあった。