幸福論

・・・あら？
いつもの調子で、ぶっきらぼうに『やめてください』とかなんとか言われると思ったのに、予想外の反応をされた。
あー、これが本来の清浦なわけか。

「そうかー、じゃあ頑張った褒美。」

小さな冷蔵庫から缶コーヒーを取り出して、ぽんっと小さな手のひらに乗っける。

「あ・・・。」

「ん？」

「初めて笑いましたね、桂木先生。」

そう言って、くすくす笑う清浦。
そして、ニヤニヤした目つきで俺を見て、

「ぶっきらぼうなのは、緊張しているからですか、桂木先生。」

と言って、俺を見た。

なんだよ。
そのとおりだよチキショー。

「図星ですか。」

そう言って、ぐびっと缶コーヒーを飲み干す。

「まあ、いいです。補習、明日もですかー？」

「え？あ、あぁ、そうだ。明日もだ。」

「ふーん。用意するものは？」

「いや、特に。」

「そうですか。じゃあ、また明日。」

またクスクス笑って、清浦はドアに手をかけた。