ライブハウス前で、小雪たちと待ち合わせした。

「こんばんは桃花ちゃん。久しぶりだね!」

「こんばんは」

「あっ、桃花。ちゃんとライブ仕様じゃん!えらいえらい」

小雪に誉められた。

鶴田さんのライブハウスに行った時に見たお客さんたちを思い出して、今日の服を考えた。

髪はボリュームが出ないように適当にまとめて毛先を散らし、

ラメついたロンTにスキニーにウエスタンブーツ。

これなら浮かないかなと思った。

「あたしたち、前のほうで見るからさ、終わったら合流しよ!」

「うん」

「司と同居してんだってね?後でいろいろ教えてね」

「あはは、うん。後でね」

小雪と彼氏さんは、楽しそうにライブハウスに入っていった。



仲良くていいなぁ。



あたしは後ろの壁にもたれて、一度だけ見た司くんたちのライブを思い出した。

今日は同じ曲も、やるのかな?

司くんが家で練習してる曲って、どんなかんじになるんだろう?

CD出してるんだよね、聴いてみたいな。

司くん、ライブの時はどんな髪型するのかな?

家でたまに前髪をちょんまげにして、パイナップルみたいになってるけど、さすがにそれはなさそうだな。


なんだかドキドキするなぁ。



待ってるのも、楽しいもんなんだね。

ライブハウスは、鶴田さんのところより少し広い感じがする。

後ろまでお客さんが入ってて、前のほうは結構ぎゅうぎゅうみたい。



司くんたち、すごいなぁ。


こんなにたくさん、人が集まって。



周りのお客さんが話してるのが聞こえる。

「セトリ、どーなるんだろ?」

「新曲やるよね絶対!楽しみ!」



うん。

今日はあたしも、素直に楽しめそう。

小雪、誘ってくれてありがとう。

司くん、家に来てくれて…ギター聴かせてくれてありがとう。

…勝手に聴いてるだけだけどね。



そんなことを考えてるうちに照明が消えて、フロアは歓声で湧いた。