「いいよって…サツキちゃん!?司、男だよ!?」

鶴田さんがあまりにも当たり前なことを言うので、あたしは笑ってしまった。

「見ればわかるよ」

「サツキちゃんいいの!?」

谷川くんも声を裏返して驚いている。

あたしは呆然としている司くんを、改めて見た。

「困ってるんでしょ?それに別に…害なさそうだし」

「…害って。俺は虫かなんか?」

「虫だったら断る。司くん、あんまり人に干渉するタイプじゃなさそうだから、あたしは全然構わない。家は広いから、部屋も別々にあるし」

「俺、バンドの練習とかで夜遅くに帰るし、ここのバイトは朝までだから、変な時間に物音させるけど大丈夫?」

「大丈夫だよ。そんなの気付かない」

「壁の厚い家なんだね…」

感心している司くんを見て、あたしは彼の天然っぷりに感心した。

鶴田さんがもう一度あたしに確認した。

「本当にいいのサツキちゃん。ボケっとしてるようでいて、実は変質者かもしれないよこいつ」

「変質者って」

司くんは不服そうな顔をして鶴田さんを睨んだ。

谷川くんはあたしに両手を合わせて、

「オーナーのお知り合いのサツキ様に変態行為はさせないよう、重々しつけておきますから!あつかましいお願いですが、うちの司をよろしくお願いします!助かります!」

と大袈裟に感謝した。

「いえいえ、部屋が無駄に空いてるだけだから、気にしないで」

あたしは手を振って谷川くんに答えたけど、本人はどう思っているんだろう?と司くんを見た。

あたしの視線に気付いて、しばらく考えた後、

「ふつつかものですが、よろしくお願いいたします」

と司くんは三つ指をついた。

「嫁かよおまえは!」

と世話役二人に爆笑され、またふくれていた。

「まあ、あんまりサツキちゃんの好意に甘えすぎないようにな。おまえ、ヒモにはなるなよ」

と鶴田さんに言われ、ヒモという言葉にすごく嫌そうな顔をした司くんは、あたしの目を見据えて言った。

「サツキさん。俺は変質者でもないし、ヒモになるつもりもありませんから、ご安心してください」

ご安心してくださいって…日本語の使い方間違ってるよ。

あたしは笑ってしまった。