目をそっと開けると、樹だった…。


「…樹?」

「紅香、良かった。大丈夫か?」

「……うん。ありがと」


一瞬唯人だと思った。

なんだか恥ずかしい。

自分の好きな人の声すら分からないなんて。

それに樹にも悪いな…。


「紅香が倒れたって聞いて心配になったんだ」

そう言って優しい顔して頭をぽんぽんと撫でた。


樹の顔見ても、唯人の顔を思い出す。

唯人に会いたい。

唯人に来て欲しい。

唯人に『大丈夫?』って優しく頭を撫でてもらいたい。

会いたいよ…。


「紅香?」

「…ん?」

樹は頭を撫でる手を止めて言った。

「泣きそうな顔してる」

「え?…泣きそう?」