「つか、また出たんだってな、鬼強盗。今朝からワイドショーで特集まで組まれてんぞ」
「あー、朝見た! 今度人襲ったんだって?」
「………………え、」

何の気なしに口走ったようで、もしかすると確信犯なのかもしれない。
涓斗の細めた右目から真意を読み取ることは難しいが、雉世は、背中を冷たいものが伝う錯覚を覚えた。

「え……今まで、盗むだけだったんじゃないの?」
「ん? あぁ……そうなんだけど、昨日入った家で人襲われて、全治3ヶ月の重傷だってよ」
「なんかね、警察のけっこー偉い人なんだって。脚やられて、もう職場復帰は無理そうとか言ってたー」

ただ強盗事件が起きるのと、そこに傷害が加わるのとでは、意味も重さも全く違ってくる。
その家の被害額は今までほど高くはないらしい。
入ったはいいけど思ったより金無くて腹立ったんじゃね、なんて言う紗散の声は、鼓膜を通り過ぎただけだった。

引っ掛かりは、『警察官』。