「……死んでんの」
「っぽいね」
「左腕だよな」
「そりゃあ」
「俺らが、やったんじゃん」
「血、こんな出たんだ」
「あたま、いたい」
「鼻で息すんなよ、ばか」


なんだか、何かが麻痺したような感覚に陥っていた。
恐怖心だとか、嗅覚だとか、三半規管だとか、そんなものだ。
ショックが大きすぎると、逆に何も感じなくなるらしいと聞くが、それはどうやら本当らしいと、実感したのはあとになってからだ。


鬼は、死んでいた。

弥桃たちが負わせた左腕の傷が致命傷だったのかは、わからない。
しかし、推定でも2、3kmの距離を、4人が道しるべにして追って来られるほどの血を流しながら歩いていたのだ。
体力が奪われたのは確かだろう。

おそらくこの研究で一番の課題だった、鬼の免疫力は、やはり改善されていなかったようだ。