大きな物音がした。

金属と金属がぶつかり合う音が、ぐわんぐわんと工場内に響く。
我に返った弥桃は、長い間息をしていなかった気がして、大きく息を吸い込んだ。

見上げると、鬼道がいたはずのところには涓斗と紗散がいて、騒音は涓斗の特殊警棒と壁を這う錆びたパイプがぶつかったからだと、鈍い思考で思い当たる。

長い話だった。
それなのになぜか一瞬の出来事だったような気もする。

頭に一気に流れ込んできた情報でパンクしそうだった。
実際、涓斗と紗散はパンクしたのだろう。
どちらからともなく、衝動的に動いてしまったようで、肩で息をしたまま、鬼道の消えた空間を見つめている。

「……立体映像だ」

背後から雉世の声が聞こえて、振り返ると、ビデオデッキほどの大きさの箱のような機械に、辺りに落ちていた骨だけの傘を突き刺していた。
雉世のいう通りならば恐らくプロジェクターか何かなのだろうそれは、隙間から突き立てられたアルミにも負けきれず、未だに途切れ途切れの低い音を立て続けている。