ユキの袖を伸ばしたとき、
ほんとはその内側にある肉に
触れたい衝動に襲われる。

ユキは楽しそうに袖を引っ張ったり
胸を突き出してみたり、
ブラウスの上から自分の胸を覗き、
そして私に目を配ってみせる。

強い日差しに照らされた
ユキの白いブラウスを見ながら、


「うん、よく似合っているよ」


ついに言ってしまった。

というよりは言わされてしまったとでもいうか。

ユキはついに「言わせた」とでも思ったのだろうか、
そのとき頬を緩めかわいい笑顔になった。

やっと言ってくれたね。

ずっと言ってくれるの待っていたに違いなかった。

しかしそれだけではなかった。

ほんとに鈍感な男とでも思っているのだろうか?
そうではない。

できるだけ興味のないようにしているだけだった。


「ほら見て。色が違うでしょ。昨日の夜染めたの」


ユキはお辞儀をするように
頭を下げて髪の毛を見せた。

垂れた髪の毛を空高く掻き分けたとき、
太陽が当たりキラキラとした輝きのある金色に見えた。

風がシャンプーの匂いを運んできた。

だいぶ前に染めた髪は
黒髪の部分が半分を占めるようになっていた。

毛先が赤くなっていて黒とのバランスを失いかけていた。

染め上がった髪はとても調和を保っていた。


「ほんとだ。きれいに染まってるよ」


オレは無意識のうちユキの髪の毛を撫でていた。
ユキは何も言わなかった。