黒瀬は引っ張っていた腕を離した。
「いや、別に……」
「なら、よかった」
すぐにまた、無表情に戻る。
そういや、自己紹介の時もずっと無表情だったな。
笑えば、可愛いのに。
「なんだ。私の顔に何かついてるか?」
「え?あ、別に。なんでもない」
無意識に黒瀬の顔を見つめていたらしい。
何やってんだよ、俺……。
めちゃくちゃ恥ずかしいじゃねぇか。
「種香、だったな」
「ん?あぁ」
何で名前知ってんの?
「何でこんな時間に、こんなとこ歩いてたんだ?」
……それはこっちの台詞だ。
「飯食いに。お前は?」
「友達の家が近くにあるから、遊びに。しかし、二年でこんなに変わるんだな。前に来たときは、そんな不良らしき奴なんていなかったのに」


