「でも私は、このカイ好きよ」
リナはにっこり笑った。

「ルイ君にカイが記憶喪失だって聞いたけど、私にとっては今目の前にいるのがカイだし」


“今目の前にいるのがカイ”


何か胸の奥からこみ上げてくるような。
そんな気持ちに、なった。


「ねぇ、カイ。カイになら話そうかな」


「ん?」

リナは腕を俺に見せた。

「リナ…」

たくさんの傷。
これはきっと自傷の跡。


きっとカッターで何度も何度も。

目をそらしたくなるほどに見たくないものだった。


「これは、証。リナがリナだっていう、証なんだよ」