「ヨクボウノハテニ」




ナンダカンダと不況という名の”ビックウェーブ”に飲み込まれた俺は
真昼の月がアーケードの屋根の隙間から見下ろす 錆びれた商店街の中を
まるで日常のように歩いていた。


商店街が職場ではない。通勤途中でもない。

真昼間に大の男がぷらぷらと何をやっているのか?


社会人になって5年目。工作機械の製造業で何の危機感もなく家族のための汗を流しながら働いていた。

もうじき1年半になるだろうか? 


”100年に1度の大不況 ”。

 ピンポイントにその風を受けた俺の職場は倒産までは行かないが 
ほぼ週3日の出勤になった。

何かと人のせいにしたがる人間達は ノストラダムスに当たり 「これを予言して欲しかった」なんて勝手な事を言うが 知らされたところで同じであり その時任せになっただろう。


 生活費は国から”ナントカカントカ”ってので普及されるが 
・・・・それでも手取り月12万だ。

妻が昼、夜とバイトに出てくれているが シフトが安定していなく時間も短い。俺もバイトを始めたいが休みがバラバラでまだ5歳の娘を一人にはできないので今の流れが限界である。

 
 娘は保育園 妻はバイト 俺は今日も・・・休み。

一人ぼっちは嫌いな方ではない 休みも大好きである。
しかし ”金のない休日”ほど自分を追い詰めるものはない。



威勢のいい声が響き渡る中 俺はいったい何処へ向かうのか?


新しい職を探す事も考えたさ ただ今は大卒の人間すら就職難で車の免許すらない俺が そう簡単に転職できるほど世の中スィートではない。

33年生きていて金がないのは変わらないが こんな時代はお釈迦様でも予想外だろう。

 俺には志半ばで充電中になった大きな野望がある。娘ができてから充電中だ・・・。

”ミュージシャン”が俺の野望だ。自作曲は100を超える。


しかし今の生活ではスタジオはおろかギターの弦すら買い換えられない。

ちなみになぜ未だに俺は無免許か それは「プロになれば自分で運転しないだろう」と
真剣に思い込み青春時代を音楽に捧げて来たからである。



あほである。