「…コツ、コツ、コツ」

俺の足音だけが響く。
吐いた息は、白く染まり虚空に登って行く。

『肌寒い』って、今の俺の状態の事を言うのだろう。

無意識にポケットに手を入れている俺の隣には、誰もいない。


友達が居ない訳じゃない。
むしろ多い方。

でも、それは俺の「仮面」の友達。
「素」で人に接した事は無い。
恐い、そう恐いから。

傷付く事が。

傷付ける事が。

だから、誰の前でも俺は都合の良い人間になる。


「寂しい」
俺の心は語りかける、俺自身に。


溜息ばかりが口を伝う。


せめて、この右手に人の温もりを感じられるなら…。


俺の心は、今日も冬の寒さに震える。