「私もご一緒していいですか?」
少し戸惑い栄一さんの方を見る。すると一瞬目が合い、彼は私に了解を求めた。
「どうぞ」
優しく席を指す栄一さん。ちょっぴり複雑だ。
「50番の今井杏子です。覚えて下さってますか?」
彼女は栄一さんに自己紹介をした後、少し品定めするように私に視線を向けた。
「ごめんなさい。僕、人の名前覚えるのが苦手で……」
「いえ、大丈夫ですよ、わかってましたから。だから改めて知ってもらおうと思って」
彼女はイタズラっぽく笑う。
3人の間に流れる微妙な雰囲気。どうしようかと戸惑っていると、辺りを回って盛り上げ役をしている司会がやってきた。
「おっと!1人の男性を巡る女のバトルが勃発かな~!?」
茶化すように私達を眺める。
「じゃあ、ココでアプローチタイム!男性35番さんのどこが気に入ったのか、お二方、素直な気持ちをアピールしちゃって☆」
急な展開に戸惑って杏子さんの方を見ると杏子さんが自身ありげに口を開いた。
「私、寿退社するのが夢なんですよ。ステキ人を見つけて結婚して家庭に入る。橘さん、お相手としてすごくいいんじゃないかと思って」
ハッキリと自分の考えを主張する杏子さんに、私は少し気後れする。
「うんうん。わかります!男性35番さんは優しそうな上、商社にお勤めですもんね~。で、女性20番さんの方は?」
相変わらずのオーバーリアクションの後、司会者の視線は私に向けられた。
「わ、私は……なんとなく……ステキな人だなぁ、と思って……」
何と言ったらいいかわからず俯く。
「お二人の気持ちを聞いて、どうですか!?」
司会者は栄一さんに意見を求める。
「まぁ、嬉しいです……」
少し照れたように栄一さん。
「パーティーはまだまだ長いですからね!お二人、もっともっとアピールしちゃって下さい☆じゃ!」
嵐のように司会者は去っていった。


なんだか3人で居るのが気まずくって、少しすると私は席を立ってしまった。
その後他の男の人と話をしてても、気になるのはやっぱり栄一さんのことだった。