「さぁー!やって参りました、フリータイムです。豪華客船を丸々一艘貸し切ったこのパーティー。ラウンジでゆったりお酒を飲みながら語らうもよし、船首で爽やかな風を感じるもよし、お好きな所で気になるお相手と思う存分お話しして下さい!」
司会者のハイテンションな進行に促され、至る所で人気のある男女の争奪戦が行われる。
「うっわ~、みんな気合い入ってるな~」
友達に誘われて興味本位で来た私はそんな人達を観察モードだ。
かくいう友達もお目当ての人を見つけたらしく、争奪戦に割って入り頑張っている姿が見える。
「うーん……でもあれはちょっと厳しそうだゾ(;^_^A」

そんな周りの熱気と雰囲気に圧倒されつつ辺りを見回すと、彼が遠くのテーブルに座るのが見えた。
一人で居ても仕方ないし、行ってみようかな。
飲み物を取りつつ彼の元へと向かう。
「ココ、いいですか?」
彼の隣りの席を指差し、尋ねる。
「もちろん。どうぞ」
爽やかな笑顔とジェスチャーで答えてくれる。やっぱりタイプだ。
「えーっと、失礼ですがお名前……」
「あ、楠美紀です。一度にあれだけの人と自己紹介すると、誰が誰だかわかんなくなっちゃいますよね」
「ゴメンナサイ。美紀さん、ですね。もう覚えました!改めまして、僕は橘栄一といいます。ヨロシク」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
二度目の挨拶にお互い吹き出してしまう。
「あはは」
「うふふ、なんだかおかしいですね」
「こういったパーティーにはよくお見えになるんですか?」
「いえ、初めてなんですよ。友達に誘われて。でも友達はお目当ての人にすっかり夢中。ホラ」
と友人の千佳を指差す。
「うーん。彼は結構難易度が高そうですね」
「やっぱりですよね。栄一さんはよくいらっしゃるんですか?」
「僕も初めてなんです。彼女いない歴がとうとう1年を越えてしまって、友達に合コン頼むのもなんだか気が引けたので、何かのきっかけになればと思って。でも凄いですよね、人がいっぱいいて」
「そうなんですよ、私も圧倒されちゃいました。自己紹介の時だってなんか回転寿司みたいだったし」
「あはは!回転寿司か。面白い表現だな、ピッタリだ」
やっぱり栄一さんの雰囲気って好きだ。
彼の笑顔を見ながら和やかな気持ちになっていると、一人の女性が近づいてきた。