「……へぇ?」



ぞくり、



桐谷さんが不敵に笑った。
笑った、と言うよりは口角を上げた、そう言った方が正しい。



不敵に笑う桐谷さんは何というか……艶っぽいというか、大人な雰囲気が出てて、格好いい。



けど、



「怖…」



ボソッと呟いた私。



ガタッと音がして、桐谷さんが立ち上がった。



一瞬、ぎくりとしたが、その殺気の矛先は向井さんだった。



「随分と面白い事を言うな?直人」



後ろ、後ろ後ろ後ろ後ろ……!!



サタンが見える!!



「ならば、お前も飲むか?『美味しい』コーヒーとやらを。さぁ、口を開け。」



そう言った桐谷さんはコーヒーを右手で持ち、左手で向井さんの口をこじ開け、上を向かせた。そして……



「よーく味わえよ?」



向井さんの口にコーヒーを流し込んだ。



「ごふぁ……がぼがぼ……」



向井さんが変な声を出す。



確かに、ただコーヒーを飲めば苦しくないのだが……



「ははは、」



と、笑っている桐谷さんに上を向かされ、左手で首を絞められてる。



だからコーヒーはうまく飲み込みにくて、しかも首を絞められてるので更に苦しい。



そこまで計算して笑っている桐谷さんは怖………



「ぶがぁ……げ…ホ…」


「なんだ、詫びでもする気か?聞いてやるよ。この状態でな。」



更に向井さんの首を締め付ける桐谷さん。



「セィ…かちゃ…助け」


「コーヒーブラックですよね?所長。」


「あぁ」



私は桐谷さんの事を『所長』と呼ぶ。性悪男は心のなかでね。



え?さっき向井さんが助けを求めてたって?
やだなぁ、無視したワケじゃないよ。巻き添えをくらいたくないからだよ?



ホラ、やっぱり人間、自分が一番♪



「コーヒー煎れましたぁ」


「あぁ」



桐谷さんは向井さんから手を離すと、向井さんのお腹に膝蹴りした。



「げふぉ!?」



はい、向井さんノックアウト~~♪♪
桐谷さんのコールド勝ち~~♪♪