「5時までだから気をつけてね〜」
あー、だから行けないのか。
「どんまいだね。いっぱい食べてくるよ」
ちょっと馬鹿にしたように
あたしは言った。
「タッパー持っていってよ〜」
あたしはすごく冷めた目で言った
「本気で言ってる?」
「はい。すいません。」
それからちょっと笑って
お互い沈黙になった。
少しして悠くんが切り出した。
「もう3年なんだな。」
「うん」
どんなに普通にしようと思っても
今日だけはやっぱり無理だ。
笑っていてもどっかでモヤモヤする。
「他人が出来るのは、結局手助けだけなんだよ。家族だってさ、本人から見たら自分以外は他人なんだから、結局一緒だし。」
他人が出来るのは手助けだけ
これは悠くんの口癖だった。
いつも、落ち着いた声で
だけどどこか寂しそうに言う。
「俺がこんなこと言ってたら駄目だけどさ。」
悠くんはそう言って笑った
これもいつも言う。
「今も自分責めちゃう?」
すごく優しい声で悠くんが言った。
少し言葉を探してからあたしは答えた。
「少し。なんか時々、誰かに思いっきり怒鳴られてボロボロに否定されたい、とか思ったりするよ」
呟くようにあたしはつい本音を言った。
「えっさっちゃんもMだったの!?」
「いやどっちかと言われたらSだけど。」
あたしのシリアスモードを返せって思いつつ
ちょっと真顔で答えた。
「だよね。」
「もっとどっちかと言われたらドSだけど。」
「ですよね。」
あたし達はまた笑った。
