夜が明ける前に




「加代!」


「……!」


「……とうさん、にいちゃん」


目を開けると、父と兄の涙顔がこちらを見ていた。



「……ふふ、変な顔…」


「喋るな…もうすぐ病院着くから」



……病院?

首を動かすとやたらに狭い空間に人間が4人くらいいて、しかも揺れている。

どうやら救急車の中のようだ。



「だめ…伝えなきゃいけな……邪魔だな、これ…」


口に付けられていた呼吸器を外す。息の音が邪魔だ。


これで、ちゃんと声が届く。


「――――?!」



「加代っ!何やってんだ!?」

「―――…やめろ。聞け」

私の行動を目にして怒りながら呼吸器を戻そうとする兄と隊員さん達を父が止める。



そんな父に笑顔を向ける。
普段バカなことばかり言っていてもやはり大人だ。
笑顔を返してくれて、頷いた。





でも、わかってるよ。



触れてる手が震えてる。





父さんも怖いんだね。





「ごめん……いつも心配ばかりかけて……」



やっぱ、ほんとだったんだ。
今までのことが走馬灯のように頭に浮かぶ。


いっぱい、心配かけたなぁ。体のことも、学校のことも……