ぼんやりと視線を高くまで漂わせていると、突然見知った顔で遮られた。
「今日も豪快に転がってんなぁ、桜木」
愉しげな声と共に空を遮った人物に片眉を上げて見せると、その人物は一層に愉快な表情を顔に拡げた。
「…なに。また逃げてきたの?」
この問いにあははー、と曖昧に笑って隣に腰を下ろす人物。
名は藤元礼(ふじもとれい)
学年きってのモテ男である、らしい。
数ヶ月前、追っかけから身を隠すためにたまたまこの場所に来て以来、彼はことあるごとにやって来るようになった。
それまで彼の存在を知らなかった私は、それはそれは驚いた。
鬱陶しいくらいのキラキラオーラをバックに背負っている人間を初めて見て、ただただ呆然。しかし今では慣れつつあるこの不思議。
「…最近よく来るねぇ」
「なんか人数増えたみたいでさぁ…撒くのが辛くなってきた。」
「…まだ増えんの?あんたどんだけフェロモン撒き散らしてんのさ。」
「ほんっと、桜木は口が悪いねー」
「藤元相手に猫なんか被ってもねぇ。」
「あームリムリ。そんな桜木見たくないもん」
お互いにくすくすと笑って、拓けた視界に満足しながらぼんやりとした会話をする。藤元が来るといつもこんな感じだ。
