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……夢、か。
静かに目を閉じると、雨音が耳に入ってきた。
シトシトと静かに落ちる音に耳を傾けながら、ゆっくりと眼を開けて体を起こした。
「…もしかして、いる?」
小さく、けれどはっきりと声を出してみる。
胸が締め付けられる感じ。
昼間に感じたのと同じだ。
薄暗い部屋をきょろりと見渡しても、人影はない。でも…
「……よく眠れたか?」
耳元で響いた声の甘さに身体がざわめく。
…やっぱり、いた。
振り向くと、斜め後ろに眼を細めたギンジがベッドに座っていた。
やはり、黒傘を手に持って。
それが何だか可笑しくて、ふっと笑ってしまう。
「……?」
こくっと首を傾げるギンジに、また笑ってしまう。
今度は眼を細めて睨まれてしまった。
「ふふっ…ごめん。一回目は何で傘持ってるんだろって笑いで、二回目が可愛いな、て笑い。」
「…よく解らないことで笑うんだな。」
ふっ、と表情を緩めた彼につい眼を奪われてしまう。
細く弧を絵描いた隙間から漏れる緋色が、薄暗い中で光る。
宝石が光を当てられたように、キラキラと揺れていた。
