夜が明ける前に



「それで今日やっと連絡が来たの。講義が全部終わったら会おう。って。で、私の怒りも収まってたし、別れ話だったらどうしよう、って思ってたんだけど…」



「………………けど?」



そこまで言って間を置く京香さんを焦れったく思ってしまって、つい急かしてしまう。気付けば前のめりになっていた。


そんな私を見て、彼女はくすりと笑うと、やっと収まっていた高揚を再び顔に表した。




「《京香のことは好き、じゃなくて愛してる、のが正しい。》って真剣な顔で言われたの!!嬉しすぎてキスしちゃった!!」


キャー!とベッドに顔を押さえつけて発狂している京香さんに、というよりも、むしろ兄の台詞に唖然。


…あの堅物がそんなこと言ったのか。




「やったね京香さん!」


何だか嬉しくなった私は拳を握って挙げると、京香さんは火照った顔を掌で仰ぎながら、ありがと!と笑った。



妹の私としてはかなり嬉しいことだ。

感情表現が¨怒¨しか上手く出来ない兄に、ここまで惚れてくれる相手がいて。
しかもその相手が、私が大好きな京香さんで。





「…解りにくい人だけど、本気なんだよ。兄ちゃんさ、¨甘え¨は京香さんにしか見せないって知ってた?」



ぽそりと耳元で教えて上げる。兄に聞こえたらどやされるってのもあるけど、何より京香さんの反応が面白い。