「…綺麗な、瞳だね。」


ぽつりと言葉を落として、黒傘の隣に腰を下ろした。

彼は顔だけ此方に向けて、すっと見下ろすと眼を細めて


「…少しは怖がった方がいい。」


表情のない顔で口だけ動かす男は、何もかもお見通しらしい。


「うん。さっき同じこと考えた。もっと怖がれよ自分って」


へらりと笑うと、黒傘も少し表情を緩めた。どうやら、始終仏頂面な訳ではないようだ。



「…何者なの?人間でないことは、なんとなく解っているつもりなんだけど」


さっきの現れ方や、彼の雰囲気から人間ではないと直感した。それに、雨に打たれていたはずの傘には水滴一つ付いていない。


緋色の瞳をしっかりと見つめて尋ねると、一瞬それは閉じられた。





そして、ゆっくりと薄く開かれると





「…俺はギンジ。お前等がいうところの、死神というヤツだ。」


無機質にそう言って、顔を正面に戻した。





「…死神…………」


彼の横顔を見上げたまま、先程の言葉を繰り返す。




死神。

亡くなったヒトをあの世から迎えに来る、という話だったような気がする。




なるほど、それなら今の格好もその異様な雰囲気も納得できるが、そんなものが何故私に見えるのか。




今までに幽霊やUFO等を一度も見たことがない、この私に。