しかし、真面目一本ではない。

震える携帯はメール到着の印。かちかちと時折メールの返事を打ちながら、講義に取り組む。

荒井からは控えめに探るメール、大江からは付き合うか付き合わないかの時期特有の甘いメールがくる。

自分とときめかせてくれるメールを読みながら、京子は微笑んだ。




講義が終り、みんなバラバラと歩いて行く中、京子はわざわざ後ろのドアから出る。

後ろの席に座っているグループに、「ちゃんと黒板見えたの?」と聞く。

すると、「ノートとか取らねぇからいいの」と中本が言う。


中本はカッコイイと京子は思う。荒井が流行り顔なら、中本は爽やか系な甘い顔だ。


「うそー。小テスト出るって言ってたよ?」

「まじで!?それはリアルにやばい!」

「ノート貸してあげるよ、コピーしたら?」


にこりと笑ってノートを差し出す。
たまに“誰かノートかして”と都合よく利用する男が居るが、その手の男には京子は貸さない。

自分から進んで貸してあげるのだ。その方が恩を着せられるから。

ありがたがられる上に優しい子だと思われるからだ。




「まじで!!神様!!天使様!!この借りは必ず返す!」

大げさに手を合わせる中本に、京子はニコニコと笑みを添えて教室を後にした。