「なにそれ、どういう意味・・・?」

「それは今はいえないよ?」


好きだとか直接的なことは言わないが、十分思わせぶりな言葉を京子は選ぶ。

健気で一途で思いやりのある女だと控えめにアピールする効果を狙えるからだ。



まるで遠まわしに好きだと言う様な態度に、大江は眉を寄せた。

が、「ヒミツヒミツ!!私だって頑張るからさー!

ほら大ちゃんサボらずに働こうよ、仕事は永遠にあるんですよ!!」と、


京子はその話は終りといわんばかりに、ふきんを片手にホールに駆け出す。

そうなると、もうそれ以上何も聞くことが出来ない。



バイトなのだから、手を抜けるところは手を抜く人間が多い。

けれど京子は一生懸命仕事に向き合う。



そんな自分を大江がなんとも言えない目をして見ていることを分かっていながら、

にやけそうになるのをこらえて仕事に励む。


(ひたむきな姿を見てもらえる時だけしか京子は頑張らない)




「待てよ、俺も働くから」


後ろからかけられた大江の柔らかい声に京子はゆっくりと振り向いた。