2日後。


「ねえねえ!アドレス聞けなかったんだ!恥ずかしくて!どうしよう!!!!」

京子は心底悲痛に顔をゆがめて、松坂に訴えた。


「え!交換してないの!?」と信じられないといった顔をして松坂は京子を見る。


「だって荒井くんみたいなカッコイイ人前にしたら、困る!!どうしよう!!松坂みたいに美人なら自信持って行けるのに!!顔交換してよ!!」

リップサービスに罪はない。人間関係を円滑にする大事な大事なウソだ。


「仕方ないな、聞いてあげるよ」


京子の様子がいじらしく、松坂は自分が連絡先を交換した男に荒井のアドレスを聞きだす。

そうして京子はしっかりと欲しいものを手に入れる。


合コンと言う出会いを軽くしない為に、すぐに連絡先は交換しない。
その上、“後日”・“人づて”にした方が、一生懸命さがアピール出来ていい。



「ありがとう!!松坂が居て良かった、私優柔不断だから…」


計算高くてウソばかり口にする自分の事を誰も疑いやしない。

むしろ純粋でほっとけない女の子、と何かと手を貸してくれる。




人生、楽して生きなければ。


携帯電話に増えた荒井の文字を見て、京子はにっこりと微笑んだ。