私は忘れない あの日の事を
心地好い陽射しの中 たくさんの人達がヒラヒラ舞う桜を 愛おしそうに見つめていた
私の家族もその一人だった
私には向けた事もない愛おしい瞳で見つめる桜に 私はどれほど嫉妬しただろう
傍から見れば ごく普通の家族
だけど 私はいつも独りぼっちだった
どんなに泣いても どんなに懇願しても 誰ひとり私を愛してはくれなかった
だけど、だけどソイツだけは違ったんだ…
ソイツ―シュウ―は、そんな独りぼっちの私に 手を差し延べてくれたんだ…
膝を抱いてうずくまる私に そっと手を差し延べた
ただただ手を差し延べ 唇の片端だけを上げ“お前もオレと同類だ”って一言呟いたんだ
その当時の幼い私は その意味が分からなかったけど、『この人について行けば地獄の様な生活から逃れられる』って思ったんだ
繋いだ瞬間のシュウの手の温もりは 一生忘れない



