『本日 入社しました杉本 亜季です。
よろしくお願いします。』



そう言って私は、
先輩方のいる事務所で
深々とお辞儀をした。



私は杉本 亜季。
先日 大学を
卒業したばかりで、
今日からは社会人として
働くことになってる。




途端に静かだった事務所に拍手の音が響き渡る。



先輩に拍手をされるなんて初めてで
正直戸惑った。



社会人として初めての出勤…。
緊張して声が上擦ってしまった。



『じゃあ、杉本くん。
君は松澤くんの下について
仕事を教えてもらいなさい。』



と私はマネージャーに
言われた。



『はい』



と言っても松澤さんという人が
どの人かさえ分からない。



『ついてきて。』



一瞬
事務所がざわついたが
先輩方は、私の存在なんてなかったのように、
黙々と仕事をこなしている。



なんだか冷たい事務所…。



カタカタカタカタ



事務所内には、
キーボードを打つ
無機質な音が響いていた。