師匠の体を伝い降りたルビーは、安全に、毛足の長いじゅうたんの上に転がっていた。

 ほっとして類は師匠の方に手を伸ばした。

 無言で、“手袋をくれ”といったつもりだったのだが、師匠はきっちりそれを理解してくれ、自分の手から取った手袋を、類の手に、ご丁寧にはめてくれた。

 類は、その手でそっと、目の前に転がっている赤い塊をつかんだ。

 確かな手触り。

それをテーブルの下から救済すると、自分の目の前でも、光にかざしてみた。赤い色が綺麗だった。

「失礼。では、コレを安全な場所に隠したいと思います」

 師匠は言って、類がケースに戻したルビーを、再び手に取るように、トキに命じた。

 トキは類の脱ぎ取った手袋をはめると、そっとルビーを手に取った。

瞬間、師匠のように落としかけて、危ういところで、ぎゅっと胸の前で掴み直した。

 一同の呼吸が止まり、一度に再会されるのが分かった。

「すみません」

「それをこれに包んでくれ」