そういえば、このスタールビーは盗品かもしれないのだ。もともとの美しいカボッションから姿を変えることで、その追跡から逃れているのかもしれないのだ。

 安西は明らかに動揺しているし。

 これが盗品であったとしたら、そのことを知っているのは確かだな。

 類は思った。

「ところでコレ、どうやって守るんですか?」

 モエギが苛々したように言った。他にある仕事を早く片付けたがっているように見える。

 こんな、自分にとってどうでもいいことに関わっている暇なんてないのだろう。

「それについては、考えがあります。その前に、もっとよく見せてもらってよろしいかな」

 安西は頷くと、手袋を脱いで添えて、ケースを師匠の方に押しやった。

 師匠はうやうやしく手袋をはめると、スタールビーを手にとって、光にかざしてみた。

と、手が滑ったのか、ルビーをするっと落としてしまった。

『なにやってるんですか!!』

 類は小声で怒ると、慌てて、テーブルの下へしゃがんだ。