「ルビヌスというのはルビーの語源だそうです。赤いという意味らしいです。うちで盗まれるほどの価値があるルビーといったら、一つだけなんで、きっとこれのことだと思うんです」

 言うと、安西は手元の呼び鈴をけたたましくならした。

 ノックの音がして、

「失礼します」

 と、さっきのメイドさんが入ってきた。

 手に黒いケースを持っていて、みんなの視線を受けながら、それをテーブルに置いた。

「萌黄くん、君もここにいてくれたまえ」

 と、モエギ嬢も足止めを食らった。

「この家で、予告状のことを知っているのは、わしと萌黄くんだけなのだ」

 モエギは居心地悪げに、そこに突っ立っていた。

「家内に知られたら大騒ぎされるだろうと思ってな、言ってないのだ」

 言いながら、黒いケースを手に取り、蓋を開けた。

 中から赤い宝石のルースが出てきた。