「あっ。トキ」

 思わず呼び捨てにして、トキの顔に一瞬不快さが走るのを見てしまった。

「そうです。今日はよろしく。成瀬君」

 類は気まずく思いつつも、自分の失言はさっさと忘れることにした。

「トキさんて、警備員が本職なんだ」

「そうです」

 言って、きびきびした動きでソファに座わった。

 そこへ、この家の主人らしき人物が入ってきた。

堂々とした体格と態度で、中小企業の社長を思わせる感じだ。

 頭はかなり薄くなって、頭頂は寒々しいが、まだ五十代、といったところだろう。

「どうもみなさま、わたくし安西といいます。

みなさま、今日はよろしくお願いします」

 安西は軽く会釈すると、一人がけのソファにどっかと座わった。