「ごめんなさい」

「ええっ?何だって?」

 まだ耳がキンキンしているらしい。

「全く。気をつけてくださいよ」

 師匠はいきなりコロンボになった。

「で、何でそんなことが分かるんですか?」

「実は、これこそが先日お話しました、私のライフワークというやつでしてね。今日扱う品物は、五十年前にモゴーク国から盗まれたものなんですよ」

 言うと、師匠は立ち上がった。

 類は応接室に飾られた品が珍しくて、うろうろし始めていた。

その類に、師匠はまとわり付くように喋りだした。

「モゴーグ国というのは、今は社会主義の国なんですが、その昔は王国だったんですよ。その王国時代、王立だった博物館に泥棒が入ったのです。国宝の宝石をごっそりいかれちゃいましてね。そのときの一品が、ここにあるスタールビーなんですよ」