類は愛車で師匠のマンションへ迎えに行くと、携帯で師匠を呼び出した。

運転席に座ったまま、マイ水筒で喉を潤していると、マンションの中から師匠はトレンチコート姿で現われた。帽子をかぶって落ち着きなさげにやってくる。
 今度のは、類にも分かった。

前にも何度か見たことがある、コロンボ刑事のコスプレだ。

師匠の真似る姿がどれだけ似てるのか気になって、テレビでやってたのをしっかりと観察しておいた。

しかし、似ていない。

「これはこれは類くん。実はうちのカミさんがあなたのファンでしてね、後でサインをいただけませんか?」
 
のたまう師匠を助手席に押し込んで、ドアを乱暴に閉めた。
 
運転席に乗り込んで急発進する。