「こういうのって、犯罪なんじゃないですか?」

「それはその、そうかもしれんが」

「白状してください。いつ、この家に忍び込んだんです?」

類が目を細めて言うと、師匠はあわてた。

「ばか者。忍び込んでなんかおらん。知り合いの建築家に言って、手に入れたのだ。この家を建てたときのだ」

「そんなもん、いくら知り合いでも、他人に渡すハズがないでしょう」

言って言葉を切ると、師匠の方へ身体を寄せて、覗き込んだ。

「ははあ。もしかして、盗んだんじゃないですか?建築家の家の猫だか犬だかを誘拐しておいて、探す依頼を受けられるようにチラシを入れて、まんまとその家に乗り込んで図面を盗んだ。違いますか?」
 
師匠は一瞬黙って類を見た。

「えっ?図星?」
 
類のほうが驚いていると、

「よくそんなこと思いつくな。今度、手に入れたい図面があったら、その手でいこう。これは本当に知り合いの建築家から手に入れたものなんだ」

「盗んだんでしょ?そんなもの、渡すハズがない」

師匠は、苦く笑った。

「人聞きの悪い。ちょっと借りただけだ」

「そーいうのを、世間では泥棒って言うんです」