茂ったアイビーが壁に這いついている喫茶店に、類は走り込んだ。

「いらっしゃいませ」
 
顔見知りのウエイトレスが、ニッコリと笑顔を送ってくる。
 
あの子、絶対あたしのこと男だと思ってるな。
 
誰にでも愛想のいい、感じのいい人なんだけれど、類を見る目の底には、並ならぬ好感が横たわっている。
 
確かに、形状記憶の白シャツに、洗いざらしたジーパンが、類の定番スタイルではあるが。

それにしたって、髪は長いし、両耳に宝石のピアスをしている。何で間違えられるのか、不服である。
 
とりあえず、ニッコリを返して、店内を見る。
 
と、お昼時で制服のOLさん達でにぎわっている店内に、ひときわ異様なオーラを放っているオヤジを一人発見した。
 
師匠だ。