師匠は類をチラリと見た。
 
類の観察眼に少々驚いたようだ。
 
類が師匠をボーッとした探偵だと思っている以上に、師匠は類を何にも考えてないヌボッとしたヤツだと思っていたのに違いない。

「あなたの想いだけ、殺せば万事上手くいく」
 
類が言うと、田口氏は目をつぶった。
 
そうして少しの間動かなかったが、やがて大きく頷いた。

「分かりました」
 
再び目を開いた田口氏からは、いいおじさんのオーラしか感じなくなっていた。
 
ここまで自分をコントロールできるなんて、すごい。
 
類は感心した。